1.2 物質収支
1.2.3 原子バランスと化学反応を伴う物質収支
今回は化学反応を伴う物質収支について説明します。例題として取り上げるのは”光合成”です。
光合成というと、皆さんは中学校や高校の「生物」で勉強したと思いますが、植物が光エネルギーを利用して水と二酸化炭素を材料にグルコース(ブドウ糖)を作り出すことで、人工的に光合成を使ってグルコースやデンプンなどを合成したという話は聞いたことがありません。しかし、最近では植物の光合成という一連の反応の中で、太陽光を使って水を分解し水素を取り出そうという試みがなされていますので、もしかしたら形を変えて光合成が成功するかも知れません。
そこで「反応を伴う物質収支」の例題として光合成を取り上げることにします。なお、人口光合成に興味を持たれる方は”光合成の森”にアクセスすると良いでしょう。
光合成の化学反応式を以下に示します。
6CO2+12H2O+光エネルギー→C6H12O6+6H2O+6O2
原料である二酸化炭素や生成する水と酸素は気体であり、原料として使用される水は植物の根から吸収されますので液体、そして生成するグルコースは常温で固体となっており、気体・液体・固体が介在する複雑な反応となっています。
そこで話を簡単にするために、反応温度をグルコースが溶解する温度(約140℃)以上の160℃とし、圧力は160℃の水の蒸気圧(約620kPa)より高い700kPa(約7気圧)と設定します。また、光合成を行うために必要な光エネルギーは特殊な電球を使用し、閉じられた容器内で反応が進行するとします。また、この反応は連続的に行われるものとしますので、原料である二酸化炭素や水ならびに触媒が連続的に容器内に供給され、生成した酸素は反応器上部から回収され、製品であるグルコースと水は液状にて容器から抜き出されるものとします。
その光合成システムを図に示します。なお、反応の進行上、容器は撹拌槽型式としました。

このシステムにおける物質収支を考えてみましょう。このような化学反応を伴う物質収支ではモル数をベースに考えると理解しやすいの、先ほどの化学反応式をもとに表を作ってみましょう。
表の作り方は最左欄に組成を表示し、その右側に分子量、さらにその右側に原料と製品(副産物の酸素も含む)のモル流量(kmol/hr)、そして最右欄二つに原料と製品の重量流量(kg/hr)を表示します。
例えば原料の一つであるH2Oは製品のグルコースモル流量を1kmol/hrとしますと、反応式から12倍を必要とします。そこで原料モル流量欄に12.0と記入します。また、製品中にはグルコースの6倍の水が生成されますので、これは製品モル量流欄に6.0と記入します。このようにして反応式に関わる全ての組成についてモル流量を記入します。
最後にモル流量と分子量を掛けて重量流量を計算し記入しますと表が出来上がります。
これを見るとわかるように、化学反応を伴う物質収支においても原料と製品のそれぞれの合計重量流量がバランス(互いに等しい)していることがわかります。
| 組成 | 分子量 | 原料 | 製品 | 原料 | 製品 |
|---|---|---|---|---|---|
| 単位 | - | kmol/hr | kmol/hr | kg/hr | kg/hr |
| CO2 | 44.01 | 6.0 | 0.0 | 246.06 | 0.0 |
| H2O | 18.02 | 12.0 | 6.0 | 216.18 | 108.09 |
| O2 | 32.00 | 0.0 | 6.0 | 0.0 | 191.99 |
| C6H12O6 | 180.16 | 0.0 | 1.0 | 0.0 | 180.16 |
| 合計 | - | 18.0 | 13.0 | 480.24 | 480.24 |
最後に、もしグルコースを1日10トン作りたい場合に必要なCO2とH2O量は幾らになるでしょうか。その計算式と結果は、
C6H12O6 = 10,000[kg/day] = 10,000[kg]/24[hr/day] = 416.67[kg/hr]
CO2 = 246.06[kg/h]/180.16[kg/hr]*416.67[kg/hr] = 569.08[kg/hr]
H2O = 216.18[kg/h]/180.16[kg/hr]*416.67[kg/hr] = 499.98[kg/hr]



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