プロセス設計の進め方、エタノール合成プロセス、

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プロセス設計の基本的な業務を、エタノール合成設備のプロセス設計を題材に説明しています。

エタノール合成設備

プロセス設計に関する説明をより分かり易くするために、仮想的なプラントを設定しました。ここでは代替燃料として注目を浴びているエタノール合成設備のプロセス設計を通じて、プロセス設計の基本を学んでいきます。

原料を二酸化炭素(炭酸ガス)と水とします。ただし、誤解が無いように言っておきますが、二酸化炭素(炭酸ガス)と水から直接エタノールを作るプロセストは実用化されていません。あくまでも仮想プラントとしてご理解下さい。

11. スチームシステムの構築

11.1 スチームシステム

下図にスチームシステムと他の設備(エタノール合成設備とエタノール蒸留設備)との関係をフロー図に示しました。その主な内容は、

  1. スチームシステム
    1. スチームシステムは合成ガス循環機駆動機であるスチームタービン(Steam Turbine for Syngas Circulator)と、復水器(Turbine Condenser)、コンデンセイトドラム(Condensate Drum)およびコンデンセイトポンプ(Condensate Pump)から構成されている。
    2. スチームタービンに入ったスチームの一部はエタノール蒸留塔のリボイラ(Reboiler)の熱源として利用され、凝縮水はコンデンセイトドラムに戻る。
    3. スチームタービンから出た排気スチームは復水器に入りそこで凝縮する。不凝縮ガスを分離した後、昇圧された後にコンデンセイトドラムに戻る。
    4. コンデンセイトドラムに集められた凝縮水はコンデンセイトポンプによりエタノール合成反応器に供給水として戻される。
  2. エタノール合成設備とスチームシステムとの関係
    1. エタノール合成反応器(Ethanol Reactor )にて発生したスチームは、合成ガス循環機駆動機であるスチームタービン(Steam Turbine for Syngas Circulator)に流入し、駆動用スチームとして仕事をする。
    2. コンデンセイトドラムからの凝縮水はコンデンセイトポンプによりエタノール合成反応器に供給水として戻される。
  3. エタノール蒸留設備とスチームシステムとの関係
    1. スチームタービンの中段からのスチーム(抽気)はエタノール蒸留塔のリボイラ(Reboiler)に供給され、その熱源として利用される。
    2. 凝縮した水はコンデンセイトドラムに戻る。

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ただし、上記のフロー図は、スチームタービン形式として抽気復水タービンを採用したケースを示しています。

11.2 スチームタービン

化学プラントで使用されるスチームタービンは、圧縮機やポンプなどのプロセス機器の駆動用として使用され、その形式から次表に示すように4種類に分類されます。

  1. 復水タービン(Condensing Turbine):流入したスチーム全量(一部のsealing用などは除く)が排気となり復水器で回収される。
  2. 背圧タービン(Back Pressure Turbine):流入したスチーム全量(一部のsealing用などは除く)が低圧スチームとして排気され、プロセス用熱源として活用される。
  3. 抽気復水タービン(Back Pressure Extraction Turbine):プロセス用として必要な低圧~中圧スチームを抽気として中間段から抜き出し、残り全量が排気となり復水器で回収される。
  4. 抽気背圧タービン(Condensing Extraction Turbine):プロセス用として必要な低圧~中圧スチームを抽気として中間段から抜き出し、残り全量が低圧スチームとして排気され、さらに別なプロセス用熱源として活用される。
スチームタービン形式と適用範囲
スチームタービン形式 適用範囲 適用例 出力(kW)
復水タービン
(Condensing Turbine)
抽気を必要としない中型
~大型スチームタービン
プロセスガス圧縮機
合成ガス圧縮機
スチームタービン発電機
100~100,000
背圧タービン
(Back Pressure Turbine)
抽気を必要とする
小型スチームタービン
小型圧縮機やファン
給水ポンプや潤滑油ポンプ
100~5,000
抽気復水タービン
(Back Pressure Extraction Turbine)
抽気を必要とする
大型スチームタービン
合成ガス圧縮機 10,000~100,000
抽気背圧タービン
(Condensing Extraction Turbine)
抽気を必要とする
中型スチームタービン
合成ガス圧縮機 1,000~30,000

11.3 スチームタービン形式の選択

先ほど説明しましたスチームシステムに適したタービンは、リボイラ熱源として抽気スチームが必要となるので、”(3)抽気復水スチームタービン”もしくは”(4)抽気背圧タービン”となります。

このどちらかを選択するかを決定する際に考慮すべき要因は以下の2点です、

  1. 発生したスチームが保有する(あるいは有効に利用できる)エンタルピーと必要なエンタルピー(抽気スチーム+動力)とのバランス。
  2. 発生したスチーム量と抽気スチーム量および排気あるいは背気スチーム量のバランス。

1.の「発生したスチームが保有するエンタルピーと必要なエンタルピー(抽気スチーム+動力)とのバランス」とは、例えば以下の試算を見れば理解できると思われます。

もし、(4)の抽気背圧タービンを採用するとし、その際の背圧を0.3MPaとすると、発生したスチームが有効に利用できるエンタルピー(動力に変換可能)は次式で計算されます。

= 75,499kg/h×(2,780.4kJ/kg - 2724.7kJ/kg = 4.205GJ/h

ここで、2,780.4kJ/kgは発生するスチーム(185℃ & 1.123MPa)のエンタルピー、 2724.7kJ/kgは0.3MPaの飽和スチームのエンタルピーです。
また、動力は合成ガス循環機の動力で熱量換算すると1.771GJ/hとなり、先ほどの動力変換可能量(4.205GJ/h)を下回ります。

= 492kW×3600kJ/kW/h) = 1.771GJ/h < 4.205GJ/h

次に必要なエンタルピーはリボイラ熱負荷で、これに充当可能な熱量は先ほどの動力の余剰分(4.205GJ/h - 1.771GJ/h)とスチームの潜熱の和であり、次式で計算します。

= 2.434GJ/h+75,499kg/h×2,163.2kJ/kg = 165.753GJ/h

リボイラの熱負荷はエタノールを蒸留する際に必要とする熱量で、少なくとも時間当たりのエタノール流量にエタノールの蒸発潜熱(855kJ/kg @ 79℃)を掛けた熱量以上となりますので、次式から計算できます。つまり、

= 956.6kmol/h×46.069kg/kmol×855kJ/kg = 37.676GJ/h

よって、リボイラの熱負荷は充当可能な熱量の合計(165.753GJ/h)より少ないので、抽気背圧タービンの採用は可能ということになります。
ただし、詳細な蒸留塔設計を行うとわかりますが、蒸留塔の循環比は蒸留塔高さに密接な関係がありますので、経済計算の結果、循環比が大きくなる場合があります。その場合には、リボイラの熱負荷はさきほどの2~3倍になることがありますので注意が必要です。この場合でも、発生したスチームが保有する(あるいは有効に利用できる)エンタルピーと必要なエンタルピー(抽気スチーム+動力)とのバランスは、次式に示すように抽気背圧タービン採用の可能性があるとしています。

= > 必要なエンタルピー{ 1.771GJ/h+(2~3)×37.676GJ/h = 77.123GJ/h~114.799GJ/h)<有効利用可能なエンタルピー(165.753GJ/h)

もう一方の抽気復水スチームタービンを使用するとどうのようなことになるのでしょうか。

同じように計算していきますと、発生したスチームが有効に利用できるエンタルピーは次式のように先ほどの抽気背圧タービンで得られる動力(4.205GJ/h)の約3.4倍となります。ただし、流入したスチームの一部が抽気されますので数値としては若干減る可能性がありますが、いずれにせよ抽気背圧タービンに比較するとバランスは明らかにエンタルピー余剰傾向が強くなりますので、エネルギーを有効に利用する別の方策が必要となります。

= 75,499kg/h×(2,780.4kJ/kg - 2592.2kJ/kg) = 14.209GJ/h

ここで、2592.2kJ/kgは50℃の飽和スチームのエンタルピーです。

結論としては、

「抽気復水スチームタービンもしくは抽気背圧タービン、両方とも使用可能」

となります。
次回は、この両ケースにおけるスチームバランスの説明と、「発生したスチーム量と抽気スチーム量および排気あるいは背気スチーム量のバランス」の意味するところを説明します。