5. プロセスの改良
5.1 循環比とエタノール生産量
先ほどの case study の結果では、エタノール生産量は理論生産量(約1100 ton/day)に比べ、15% ~65% 強の160~720 ton/day にしかなりません。これでは、せっかく入手した水素や二酸化炭素の 1/3~9/10 が無駄に捨てられることになります。
このエタノール生産量を増やす方法はあるのでしょうか。
その解答の一つが循環システムの採用です。つまり、エタノール合成反応器を出た未反応ガス(H2+CO+CO2)を回収して、再びエタノール合成反応器に戻し、新たな原料ガスとともに循環させるシステムの採用です。この循環システムを構築するためには、次の行程が必要となります。
- 合成反応器出口の合成ガス中に含まれるエタノールとスチームが凝縮する温度まで合成ガスを冷却する。
- 冷却された合成ガスからエタノール+水を未反応ガスから分離する。
- 回収した未反応ガスを循環させ、新たな原料ガスを加えて、再びエタノール合成反応器に戻す。
1. の冷却凝縮のためには冷却凝縮器を合成反応器出口に配置し、2. の分離のためには冷却凝縮器下流に気液分離器を設置します。そして3. の循環のためにはガス循環機を設置します。
この循環ガス流量を増加させると、エタノール合成管における原料ガス中の水素および二酸化炭素のエタノールへの転化率が向上し、エタノールの生産量が増加します。この循環量(循環比=未反応ガス量÷原料ガス量)とエタノール生産量の関係を下図に示しました。
この結果から、循環比の増加に対してエタノール生産量の増加が鈍化し始める循環比( 0.7 )を設計ベースとします。
循環比を 0.7 とする
この循環比が最適かどうかについて結論を出すためには、エタノールの原料原単位と合成反応器+触媒+その他機器コストを算出し、経済性を考慮する必要があります。(これより先の議論については機会を作ってお話しします)

5.2 循環システムの構成
循環システムにすることによりエタノールの生産量が増加することがわかりましたので、次にこの循環システムの設計について検討します。
今までの議論の中から循環システムの構成と運転条件に関係する部分をピックアップしてみますと、
・エタノール合成反応条件:圧力3MPa、温度200℃
・反応装置出口合成ガスの冷却と凝縮
・反応装置出口合成ガス中のエタノール(+水)の分離
・未反応ガスの循環
・未反応ガスと原料ガス(水素+二酸化炭素)の混合
・反応装置供給ガスの加熱
これらから循環システムの構成機器を考えると、
(1)未反応ガスの循環機→合成ガス循環機
(2)未反応ガスと原料ガスの混合→合成管供給ガスと称する
(3)合成管供給ガス加熱器→供給ガス加熱器
(4)エタノール合成管
(5)合成管出口ガス冷却器(凝縮器)→出口ガス冷却器
(6)エタノール分離器
この循環システムをブロックフローに示しました。この中で、四角形で囲った部分が機器を示し、◆が流れの混合や分離を示しています。ただし、機器内にて混合や分離を行っている場合には、◆は敢えて示していません。
また、この図にわかる範囲で運転条件を書き込んでいます。ただし、( )内の数値は推定値ですので、後々変更することがあります。




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