7. 熱収支計算
7.1 運転条件の設定
エタノール合成循環システムの熱収支を計算するために、主要機器の運転条件を設定します。その条件を表と図に示しました。ただし、合成ガス循環機出口温度は循環機の仕様に左右されますので、暫定的に循環機入口(エタノール分離器)温度と同じとしました。
また、各機器での圧力は、循環ロープにおける圧損を運転圧力の約10%として割り振りしました。
エタノール合成工程の運転条件
| Stream name | Stream No. | Pressure(MPa) | Temperature(deg.C) |
|---|---|---|---|
| Makeup gas | 0340 | 3.10 | 35 |
| Circulator discharge | 0400 | 3.10 | 35 |
| Heater inlet/Mixed gas | 0410 | 3.10 | 35 |
| Reactor inlet & heater exit Reactor feed | 0440 | 3.05 | 175 |
| Reactor exit & Cooler inlet Reactor effluent | 0450 | 3.00 | 200 |
| Cooler exit & separator inlet Reactor effluent | 0485 | 2.80 | 35 |
| Seaparator & circulator suction Separated gas | 0490 | 2.80 | 35 |
7.2 熱収支計算結果
熱収支を計算する上で必要な物性は、エンタルピー、生成エネルギーあるいは蒸発潜熱などである。これら物性を準備して、先ほど計算した物質収支の結果をもとに熱収支を計算していく。
詳細は省くが、計算結果のみを次表に示した。前提としては理想気体として扱っているので圧力変化によるエンタルピー変化は無視しており、絶対温度基準となっている。また、圧力と温度の単位はそれぞれMPaと℃である。
この結果から、エタノール合成反応器上流の供給ガス加熱器と、エタノール合成反応器下流の出口ガス冷却器の熱負荷は以下のようになる。
- 供給ガス加熱器負荷 = -346.1-(-363.0) = 16.9MW
- 出口ガス冷却器負荷 = -395.6-(-456.1) = 60.5MW
また、エタノール合成反応器において除去すべき熱負荷は次式より計算でき、49.5MWになる。
- エタノール合成反応器負荷 = -346.1-(-395.6) = 49.5MW
これから考えられることは、供給ガス加熱器負荷(35℃→175℃)の一部または全部を出口ガス冷却器負荷(200℃→35℃)で補うことが出来れば、熱効率の改善に寄与すること、そしてエタノール合成反応器負荷(175℃→200℃)を回収できれば、これも熱効率の改善に寄与できる。
| Stream No. | 0340 | 0400 | 0410 | 0440 | 0450 | 0485 | 0490 | 0495 | 0491 |
| Pressure | 3.20 | 3.20 | 3.20 | 3.05 | 3.00 | 2.80 | 2.80 | 2.80 | 2.80 |
| Temperature | 35 | 35 | 35 | 175 | 200 | 35 | 35 | 35 | 35 |
| Heat GJ/h | -784.5 | -522.3 | -1306.8 | -1246.1 | -1424.1 | -1642.1 | -554.9 | -1087.0 | -32.60 |
| Heat MW | -217.9 | -145.1 | -363.0 | -346.1 | -395.6 | -456.1 | -154.1 | -301.9 | -9.0 |
7.3 熱回収システム
熱効率改善を目的に、供給ガス加熱器負荷を出口ガス冷却器負荷で補うために熱回収システムを検討する。つまり、合成反応器に供給されるガスの加熱を合成反応器出口ガス(200℃)にて行うようにします。
そのためには、
供給ガス温度<合成反応器出口ガス温度
の条件が必要です。先ほど示した運転条件ブロックフロー図では供給ガス温度を175℃、合成反応器出口ガス温度200℃に設定していますので、”供給ガス温度<合成反応器出口ガス温度”を満足しています。
因みに、この両者の温度差(200 - 175 = 25℃)を決めるに当たって考慮すべき項目があります。
- 熱交換器伝面が極度に大きくならないように、また、物性の信頼性から温度差をmin.10℃以上とする。
- 加熱流体の一部が熱交換途中で凝縮する場合には温度交差の可能性があるので、温度差を大きくする必要がある。
- 温度差を大きくすると、逆に合成反応器から回収できる熱量が減少する。
このような条件が満足出来ることを確認した上で熱回収量を求め、その結果を下図のブロックフローに示しました。つまり、
- 合成管供給ガス(35℃)を”供給ガス熱交換器”にて175℃まで加熱する。この供給ガス熱交換器の熱負荷は16.9MWである。
- 合成管出口ガス(200℃)は”供給ガス熱交換器”にて170℃まで冷却される。このときの熱負荷は当然16.9MWと同じになる。
- ”供給ガス熱交換器”を出た合成管出口ガスは”出口ガス冷却器”にて35℃まで冷却され、エタノール分離器に移送される。この出口ガス冷却器の熱負荷は 60.5 - 16.9 = 43.6MWになる。
この熱回収を行うことでエタノール合成循環システムに供給される熱負荷が減少し、エタノール製造における原単位が向上します。具体的には、
- エタノール生産量は1058ton/day
- 供給ガス熱交換器での熱回収量が約16.9MW(60.8GJ/h)
- 原単位改善は、60.8GJ/h×24h÷1058T/D=1.38GJ/ton-EtOH
エタノールの高位発熱量(液)が約29,700kJ/kgですので、この原単位改善はエタノールの持つ発熱量に対し、次式のように約5%弱となります。
- 1.38GJ/T-EtOH÷29.7GJ/T-EtOH=4.7%
7.4 全体物質熱収支
このエタノール合成の熱回収システムは、合成管に供給されるガスを合成反応器出口のガスで加熱するという簡単なシステムです。しかし、簡単なシステムであっても、複雑なシステムであってもエンジニアリング上考慮しなければならない項目がいくつかあります。それは、
- 熱収支計算結果をチェックし、入熱と出熱がバランスしているかどうかを確認する。
- 合成反応器出口ガスにはエタノールと水が含まれており、熱交換器などでその一部が凝縮する可能性がある。そのようなケースでは、加熱流体と被加熱流体の温度を小さくすると熱回収量は増加するが、熱交換途中で被加熱ガス温度が加熱流体温度を上回り逆転する可能性がある。これを温度交差と呼んでおり、実際上あり得ないので、このような場合には熱回収量を減じる必要がある。
- システムの運転起動時においては反応が十分に進行していないので合成反応器温度が低い。そのために供給ガス熱交換器にて供給ガス温度が十分に加熱できないことがある。その場合にはスタート時のガスの加熱方法を別途考えなければならない。
熱収支結果のチェックのために物質熱収支計算結果を表に示しました。このシステムでの入熱項目は”原料ガス”のみで、出熱項目は”エタノール+水(粗エタノール)”と”パージガス”、”合成反応器”と”合成管出口ガス冷却器”の四つが上げられます。
計算結果を見ますと、流入合計と流出合計の熱量差はごくわずかであり、計算の精度としては0.1%以下なので計算の信頼性は十分と判断します。
| Heat input | 流量 | 熱量 |
| 項目 | kg/h | kW |
| 原料ガス | 100,396 | -217,916 |
| 流入合計 | 100,396 | -217,916 |
| Heat output | 流量 | 熱量 |
| 項目 | kg/h | kW |
| 粗エタノール | 95,868 | -301.936 |
| パージガス | 4,526 | -9,045 |
| 合成管回収熱 | ---- | 49,504 |
| 合成管出口ガス冷却熱 | ---- | 43,688 |
| 流出合計 | 100,394 | -217,789 |
| 流入-流出 | 2 | -127 |



前のページへ

