プロセス設計の進め方、エタノール合成プロセス、

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プロセス設計の基本的な業務を、エタノール合成設備のプロセス設計を題材に説明しています。

エタノール合成設備

プロセス設計に関する説明をより分かり易くするために、仮想的なプラントを設定しました。ここでは代替燃料として注目を浴びているエタノール合成設備のプロセス設計を通じて、プロセス設計の基本を学んでいきます。

原料を二酸化炭素(炭酸ガス)と水とします。ただし、誤解が無いように言っておきますが、二酸化炭素(炭酸ガス)と水から直接エタノールを作るプロセストは実用化されていません。あくまでも仮想プラントとしてご理解下さい。

9. エネルギー収支

9.1 エネルギー収支表の作成

エタノール合成循環システムの基本設計もスチームシステムの段階に入ってきました。そこでエタノール合成循環システム全体のエネルギー収支(熱収支も含む)について補足しておきます。

このエネルギー収支(エネルギーバランス)は熱収支に電力などの形態の異なるエネルギーを含めたもので、energy input と energy output から構成されています。

energy input の主なものは原料、燃料、外部からのスチームや温水、冷却水や冷水、そして電力などで、一方のenergy output には製品や副製品、排ガスや廃液などの廃棄物、余剰になったスチームや凝縮水、温水・冷却水・冷水の外部への戻りなどが含まれます。
エタノール合成循環システム全体のエネルギー収支を考えてみますと、以下のようになります。

エタノール合成循環システムのエネルギー収支「Energy input」
Energy input 流量 熱量
項目 kg/h kW
原料ガス 100,396 -217,916
加圧温水供給 --- ----
冷却水供給 --- ---
ガス循環機動力 --- ---
流入合計 --- ---

エタノール合成循環システムのエネルギー収支「Energy output」
Energy output 流量 熱量
項目 kg/h kW
粗エタノール 95,868 -301.936
パージガス 4,526 -9,045
発生スチーム --- ---
冷却水戻り --- ---
流出合計 --- ---
流入-流出 --- ---

このエネルギー収支は以前説明しました”物質熱収支計算結果”とは以下の点で異なっています。

  1. 合成ガス循環機の動力が加算された。
  2. 合成反応器が加圧温水供給と発生スチームに分割された。
  3. 合成管出口ガス冷却熱が冷却水供給と冷却水戻りに分割された。

9.2 合成ガス循環機の軸馬力計算

先ほど冷却水や発生スチームについて検討しましたので、ここでは合成ガス循環機の動力の計算を行います。

良く知られているようにガス圧縮機や循環機の軸動力は次式で計算します。ただし、BHP:軸馬力(kW)、G:質量流量(kg/h)、Hp:ポリトロピックヘッド(m)、ηp:ポリトロピック効率、ηm:機械効率を意味しています。

  • BHP=G×Hp÷(3600×102×ηp×ηm)

ここでHpは次式から計算します。ただし、Z:圧縮係数(定圧では一般に1)、Mw:ガス分子量、Ts:吸込温度(℃)、CR:圧縮比(=Pd/Ps)、k:ガスの比熱比、そしてBは比熱比とポリトロピック効率から計算できる変数です。

  • Hp=(Z×848/Mw)×(273.15+Ts)×(CR^B-1)/B
  • B={(k-1)/k}/ηp

エタノール合成設備の合成ガス循環機の質量流量Gは物質収支から72,599kg/h(5615.5kmol/h)、分子量Mwは12.928、吸込圧力Psは2.8MPa、吐出圧力Pdは3.1MPaで、吸込温度Tsは35℃とします。また、ガスの比熱比はH2、CO、N2などの二原子分子が約77%、三原子分子のCO2が残り23%なので、次式より1.384とします。

  • k=1.4×0.77+1.33×0.23=1.384

また、ポリトロピック効率は80%、機械効率を98%とすると、

  • B ={(k-1)/k}/ηp=(1.384-1)/1.384/0.8=0.3468
  • Hp =(Z×848/Mw)×(273.15+Ts)×(CR^B-1)/B=(1.0×848/12.928)×(273.15+35)×{(3.1/2.8)^0.3468-1}/0.3468=2,094m
  • BHP=72,599kg/h×2,094m÷(3600×102×0.8×0.98)=528kW

以上で合成ガス循環機の動力が求められました。この軸動力に相当する熱量(約1.9MJ/h)はエタノール合成循環システムに投入されるエネルギーで、現象的には合成ガス循環機出口温度の上昇となります。循環ガスの平均比熱を31.1kJ/kmol-Kとすれば、温度上昇は約10℃となり、出口温度は45℃になると予想されます。
また、この増加した熱量は最終的には合成管出口ガス冷却器の冷却負荷の増加をもたらします。
次表に計算されたエネルギー負荷を挿入しました。ただし、この表では合成ガス循環機の動力分を合成管出口ガス冷却器の冷却負荷に上乗せしておりません。

エタノール合成循環システムのエネルギー収支「Energy input」
Energy input 流量 熱量
項目 kg/h kW
原料ガス 100,396 -217,916
加圧温水供給 75,499 8,806
冷却水供給 3,759,000 109,846
ガス循環機動力 --- 528
流入合計 --- -98,736

エタノール合成循環システムのエネルギー収支「Energy output」
Energy output 流量 熱量
項目 kg/h kW
粗エタノール 95,868 -301.936
パージガス 4,526 -9,045
発生スチーム 75,499 58,310
冷却水戻り 3,759,000 153,493
流出合計 --- -99,178
流入-流出 --- 442