化学工学とは何か
化学工学と化学工業(その発展と今後)
化学工業が誕生してから今日に至る発展の様子はエネルギー資源の変遷と密接な関係にあった。
18世紀に入って蒸気機関が発明され、石炭が燃料として大量に使用されるようになった。また石炭を乾留して作ったコークスを使うことで、その高い発熱量から製鉄法が格段の進歩を果たした。その後19世紀後半には、コークス製造の副産物であるコールタールから染料であるインジゴが合成出来るようになり染料工業はドイツを中心に発展した。
このように石炭化学工業が産声を上げてから半世紀に後には中近東を中心に発見された石油の時代に移り、それに伴って石油化学工業が誕生し、現在に至っている。
化学工業は石炭、石油、そして天然ガスとエネルギー資源の変遷と轍を同じに発展してきている。現在、化学基礎原料として使用されているエチレンの消費量は年間で約1億トンにも達している。また、肥料工業の基礎原料であるアンモニアも人口の増加に対応する形で、その世界中での消費量は1.5億トンに達している。
このように盛況を極めている化学工業であるが、ご存じのように「環境およびエネルギー問題」から大きく変わろうとしている。下図の世界全体における一次エネルギーの消費構成を見るとわかるように、化石燃料の占める割合は88%に達している。(出典:BP Statistical Review of World Energy June 2009)
また、石油や天然ガスを原料として化学繊維、合成樹脂、合成洗剤、化学肥料などが製造され、その商品なしには生活できない状況になっている。エネルギーソースをバイオマスなどの再生可能エネルギーなどに転換しようとしているが、それでは不十分であり、化学繊維など合成物質の原料も石油などから別のソースに変えていかなければ、将来、エネルギーソースとマテリアルソースとのせめぎ合いになることは必至であろう。
そのためにも化学工学はマテリアルソースの転換を行い、長期的な展望に立って新しい化学体系を構築する必要がある。すでにエチレンはナフサベースから天然ガスを原料としたエタンベースに転換しようとしている。ただし、石油の採掘可能年数は42年、天然ガスが60年といわれており、残された時間は産業革命以来の年数(約170年)に比べると1/4~1/3と短い。
- 序章 化学工学とは何か
- 化学工学の特徴
- 化学工学と化学工業(その発展と今後)
- 化学工学と化学プロセス
- 化学工学と化学プロセス(原料と製品)
- 化学工学とプラント設計(化学プラントと機械プラント)
- 化学工学とプラント設計(化学工学の内容)
- 第1章 化学工学入門
- 1.1 化学工学の基本コンセプト
- 1.2 物質収支(液体)
- 1.2.1 物質収支(液体)続き
- 1.2.2 物質収支(気体)
- 1.2.3 原子バランスと化学反応を伴う物質収支
- 1.2.3 原子バランスと化学反応を伴う物質収支(続き)
- 1.2.4 制御システムと化学反応を伴う物質収支
- 1.3 熱収支とエネルギー収支
- 1.3.1 単位操作と運転条件
- 1.3.2 熱収支とエネルギー収支の計算
- 1.4 流動
- 1.4.1 流動と拡散